外国人介護人材の受け入れは、もはや一時的な人手不足対策ではなく、施設運営の未来を左右する重要な経営戦略です。しかし、「まずは採用して、あとの教育は現場の先輩にお任せ」といった場当たり的なスタートを切ってしまうとどうなるでしょうか。指導の質にばらつきが出るだけでなく、現場の日本人スタッフが疲弊し、せっかくコストをかけて採用した外国人材の早期離職という、手痛い経営損失につながってしまいます。受け入れを成功させ、彼らを確実に「定着する戦力」へと育てる最大の鍵は、教育や管理を個人のスキルに頼らない「仕組み化(準備・研修・業務標準化)」にあります。本記事では、今後の新制度(育成就労制度)への移行もしっかり見据え、受け入れ前の体制構築から、即戦力化のための初期研修設計、そして現場が無理なく回せる運用ルールまでを解説します。1.外国人介護人材受け入れ制度とは?│技能実習はなくなる?介護分野における外国人材の受け入れは、現在大きな転換期を迎えています。令和6年6月に公布された改正法により、従来の「技能実習制度」は発展的に解消され、我が国の人手不足分野における人材育成と確保を目的とした「育成就労制度」が創設されました。育成就労制度は2027年(令和9年)までの施行が予定されており、これまでの国際貢献という目的に加え、3年間の就労を通じて「特定技能1号」水準の人材を育成・確保することが明確に打ち出されています。介護職種特有の「固有要件」についても、この新制度の枠組みの中で適正に運用されることが求められます。また、この新制度は特定技能制度との連続性を持たせることで長期的な就労を可能としていますが、受け入れ側が十分なキャリア支援を行わなければ、単なる単純労働力の補填で終わってしまうという課題も指摘されています。育成就労制度の目的と監理支援機関によるサポート育成就労制度の大きな特徴は、単なる技能移転ではなく、特定技能1号への円滑な移行を見据えた「人材育成」に主眼を置いている点です。受け入れ形態においては、従来の「監理団体」が「監理支援機関」へと名称を変え、その許可基準が厳格化されます。この監理支援機関は、育成就労外国人と受け入れ機関との間の雇用関係成立のあっせんや、実習が適正に行われているかの監理を行います。具体的には、外部監査の義務付けや、役職員の人数に応じた受け入れ人数の規制など機能強化が図られ、体制を整備できない旧来の監理団体は関与できなくなります。さらに新制度最大の留意点である、本人意向による「転籍」の支援など、労働者としての権利保護においても重要な役割を担います。新制度では、やむを得ない事情がある場合や、一定期間(分野ごとに1〜2年の制限期間が設けられる見込み)の就労を満たした場合に転籍が可能になります。施設側には「せっかく育てた人材が流出するリスク」が生じるため、待遇や教育体制を見直し、日本人と同等以上の適正な労働条件が確保されているかを労働組合や第三者と連携してモニタリングするなど、「選ばれる施設」を目指すことが重要です。事業所・指導員・人数枠|受け入れ施設に求められる必須要件育成就労制度においても、受け入れ対象分野は原則として特定技能制度と一致させることが基本方針となっています。介護分野では、これまで通り介護福祉士国家試験の実務経験対象施設であることが基準となりますが、訪問系サービスは引き続き対象外となる見込みです。指導体制については、技能実習制度で培われた「介護福祉士等の資格保有者による指導」や「職員数に応じた上限枠」の考え方が維持されますが、今後は「分野別運用方針」に基づき、国内人材の確保状況等を踏まえた受入れ見込数が設定され、それが上限数として運用されることになります。企業ごとの受け入れ枠は常勤職員数に応じて定められますが、優良企業や地方の企業においては枠の緩和措置が設けられます。一方で、特定技能制度への移行後を見据え、一部企業への外国人スタッフの過度な集中を防ぐためにも、各施設における国内労働力の確保や生産性向上の取り組みがより厳しく問われるようになります。★現在の受け入れ制度(2026/04)現在は、経営の安定性を担保するため、事業所として設立または開設から3年以上が経過していることが条件となります。指導体制については、実習生5名につき1名以上の技能実習指導員を選任する必要があり、そのうち1名以上は介護福祉士等の資格保有者でなければなりません。受け入れ可能な人数には上限が設けられており、事業所ごとの常勤職員数に応じた年間受け入れ枠(例:常勤30名以下なら年間3名まで等)が定められており、かつ、実習生の総数が常勤介護職員の総数を超えない範囲で設定されています。日本語能力要件と教育の基準|「A1・A2・B1」へのステップ新制度では、日本語能力の要件がより体系化されます。介護現場での円滑な業務遂行のため、以下のステップが設定されています。就労開始前(入国時)日本語能力A1相当以上(日本語能力試験 N5等)の合格、またはそれに相当する講習の受講が必要です。※従来の介護職種における入国時N4要件よりハードルが下がる可能性があるため、現場でのコミュニケーションエラーを防ぐ初期フォローがより重要になります。特定技能1号への移行3年間の育成就労修了までに、日本語能力A2相当以上(N4等)の合格が求められます。本人意向による転籍一定期間の就労に加え、技能検定基礎級および日本語能力試験(A1相当以上)への合格が条件の一つとなります。長期滞在を見越して日本語要件が設定されており、要件に満たない場合は入国後に講習が義務付けられますが、特に地方においては質の高い日本語教師や教育機関の確保が困難であるという課題も指摘されています。施設単独ではなく、外部と連携した支援体制の確保が急務と考えられています。★日本語教育の参照枠(CEFR)に基づくレベル目安・A1(N5相当):具体的な欲求を満足させるための、よく使われる日常的表現を理解・使用できるレベル。・A2(N4相当):直接的関係がある領域に関する、よく使われる文や表現を理解できるレベル。特定技能1号への移行基準となります。・B1(N3相当):仕事、学校、娯楽で日常的に出合う身近な話題について、主要点を理解できるレベル。特定技能2号への移行を目指す段階です。現場の安全性とキャリアパス|特定技能へのスムーズな移行現場での実務においては、引き続き利用者の安全確保が最優先されます。夜勤制限などの安全措置は、育成就労制度下でも重要なコンプライアンス項目です。特筆すべきは、育成就労(3年間)から特定技能1号(5年間)、そして熟練した技能が求められる特定技能2号(在留期間制限なし)へとつながる明確なキャリアパスが整備された点です。実習生(育成就労外国人)は、就労を通じて「身体介護」を中心とした基本技能を習得し、最終的には特定技能1号評価試験や日本語試験(A2相当)に合格することで、長期的なキャリア形成が可能となります。施設側には、単なる労働力としてではなく、将来の介護現場を支える専門人材としての育成・支援体制を構築することが、これまで以上に強く求められます。初期教育にコストと労力をかけることが、結果的に「永く自社で活躍してくれる中核人材の確保」という最大のリターンにつながるのです。★現在の夜勤に関する制度(2026/04)夜勤業務や緊急時の対応が求められる業務については、2年目以降の実習生に限定することが努力義務として規定されており、常に技能実習生以外の介護職員を同時に配置する(指導員を伴う)などの措置を講じなければなりません。2.外国人介護人材(技能実習生)の受け入れ前の準備と全体設計外国人介護人材(主に技能実習生)の受け入れを成功させるためには、現場任せではなく、組織全体で再現可能な体制を構築し、事前準備を徹底することが重要です。受け入れ後に問題が発生する多くのケースは、初期段階での設計不足が原因です。実際に外国人材を受け入れた施設のアンケートでも、事前の準備として「日本人職員への説明」や「住居の確保」、「指導員の選定」、「生活必需品の確保」などに多くの事業所が取り組んでおり、組織的な受け入れ準備がいかに重要であるかが浮き彫りになっています 。単なる人材受け入れではなく、「教育・業務・管理」を一体として設計することで、安定した運用が実現します。本章では、仕組み化の考え方と受け入れ前に行うべき具体的な設計手順を整理します。外国人人材の教育を個人に頼らない│「仕組み化」の必要性受け入れにおいて最も避けるべき失敗の原因は、指導や管理を特定の担当者に依存する「属人化」です。指導者ごとにやり方や判断基準が異なる状態は、外国人スタッフの混乱や早期離職といった重大な経営リスクに直結します。この「属人化」を防ぎつつ、現場の忙しい業務の中でも直感的に運用できるよう、以下の要素を整備することが重要です。視覚化:手順を文章だけでなく図やフローで表現し、シンプルにする。漢字や難しい単語が理解できなくても、絵や図、写真や動画を活用することで外国人スタッフも即座に理解できるようになります。基準の言語化:「できているか」の判断基準を明確にする。説明する際は回りくどい表現を避け、できるだけ短く簡潔な「やさしい日本語」を用い、ゆっくり明瞭に話すことが大切です。運用の徹底:マニュアルやチェックリストに基づく教育をルール化する。マニュアルの漢字・カタカナにはひらがなでルビを振り、難しい言葉には注釈をつけるなどの工夫も必要です。加えて、日本のコミュニケーションは「空気を読む」といった「高文脈(ハイ・コンテクスト)文化」ですが、外国人スタッフに対しては曖昧な表現を避け、「主語」と「述語」を明確にするなど、異文化理解に基づいたコミュニケーションの仕組み化も不可欠です。▶ 指導のばらつきが招く現場のトラブルや、具体的なコミュニケーション・教え方の統一手法については、別記事『外国人介護職との「伝わる」コミュニケーションの仕組みづくり│どう指導すればいい?』にて詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。どの役職が何を担当する?役割分担の明確化受け入れを円滑に進めるためには、関係者の役割と責任を明確にすることが不可欠です。責任の所在が曖昧なまま進めると、問題発生時に対応が遅れ、現場の混乱を招きます。主な役割は以下の通りです。役職役割・要件技能実習責任者全体統括・最終判断。過去3年以内に養成講習を受講している必要があります。技能実習指導員(教育担当)研修・指導の実施。常勤かつ修得技能について5年以上の実務経験が必須。技能実習指導員(現場指導員)日常業務のOJT。同上の要件(常勤・5年以上の実務経験)を満たす必要があります。生活指導員実習生の生活支援や手続き対応。常勤職員であることが求められます。外国人スタッフの受け入れにおいては、これらの担当者が密に連携し、実習生を孤立させないサポート体制を築くことが重要です。また、メンター制度(豊富な知識と経験を持つ先輩社員が後輩を個別支援する制度)を導入し、仕事の悩みだけでなく、生活面の不調やホームシックなどにも早期に気づき対応できる「相談窓口」としての役割を明確にしておくことも効果的です。さらに、住居や家電・家具の準備、銀行口座やライフラインの契約、ゴミの出し方などの生活ルールの指導も、生活指導員を中心に行う重要な事前準備となります。業務フローの可視化│全体の流れを理解しながら動ける人材を育む役割分担と共に必ず行うべきなのが、業務フローの可視化です。現場の業務が整理されていない状態で受け入れると、指導内容が曖昧になり、実習生の混乱につながります。業務フロー整理の手順は以下の通りです。現在の業務を洗い出す作業手順を細分化する優先順位を設定する標準的な流れを定義するこのプロセスを通じて、「誰が・何を・どの順番で行うか」を明確にします。また、現場でご利用者がよく使われる方言は、外国人スタッフにとって理解が難しく、コミュニケーションの壁となります。業務フローやマニュアルと合わせて、事前に地域特有の方言一覧を作成し、学べる機会を設けることも、スムーズな業務遂行を助ける工夫の一つです。★業務フローの可視化や課題の洗い出しは、外国人材の教育だけでなく、令和8年度(2026年度)臨時報酬改定における新たな処遇改善加算の要件(生産性向上・特例要件等)を満たし、施設収益を最大化するための必須プロセスとしても極めて重要です。)3.外国人介護人材を即戦力にする「初期研修」と「教育内容」の設定│何をどう教える?初期研修は、実習生が日本の介護の基本を正しく理解し、現場で安心して力を発揮するための極めて重要なプロセスです。単に作業手順を伝えるだけでなく、日本の介護が目指す「自立支援」の考え方や根拠を、相手に伝わる形で提示する必要があります。本章では、限られた時間で実習生を即戦力化するために、「どの順番で・どう教えるべきか」という具体的な教育内容の設定と、指導のポイントを解説します。初期研修はどう進める?スケジュール作成のポイント初期研修は場当たり的に行うのではなく、段階的なステップとスケジュールとして設計することが重要です。特に外国人材の場合、日本語理解や業務経験の差を考慮し、無理のない進行を設計する必要があります。<基本的な研修の流れ>【オリエンテーション(施設ルール)】 → 【基礎知識研修(介護の基本)】 → 【業務理解(フロー・役割)】 → 【実技研修(基本動作)】 → 【OJT移行準備】各ステップには、「利用者の目を見て基本的な挨拶ができる」「車椅子のブレーキ忘れなど安全確認ができる」といった具体的な到達目標を設定します。到達水準の目安として、1年目修了時には「指示の下であれば、決められた手順等に従って基本的な介護を実践できるレベル」を目指します。これを踏まえたスケジュール作成の手順は以下の4点です。研修期間を設定する(例:2週間〜1か月)各ステップに必要な日数を割り当てる教育内容を日単位で配置する評価タイミングを設定する (例:1週目=基礎知識・施設見学 / 2週目=業務理解・実技基礎 / 3週目=OJT準備)重要なのは「余裕を持たせた設計」です。個人差を考慮して予備日や補習時間を確保し、スケジュールを明確にすることで、スムーズな研修運用が実現します。特に、受け入れ初期の1〜2ヶ月目は実習生の不安が大きいため、1日の流れや担当指導者の名前を明示した詳細な「技能実習プログラム」を作成し、安心して実習に臨める環境を整えることが効果的です。★2027年(令和9年)までに施行予定の育成就労制度では、就労開始前にN5相当の日本語能力が要件化されるため、初期研修では現場特有の専門用語や認知症ケア等におけるコミュニケーション(非言語的サインの読み取り等)に特化したオリエンテーションへと比重を移すことが可能になります。どこから業務を教えればいい?手順書・教育内容の作成ポイント初期研修の品質を安定させ、現場の業務を標準化する第一歩は、教育内容を整理し現場の業務を「手順書」として明文化することです。経験者の暗黙知に依存せず、誰でも同じ手順で実施・指導できる状態を目指します。指導の際は、単に作業の手順を教えるだけでなく、その行為がなぜ必要なのかという「根拠や考え方」を必ず伝えることが重要です 。標準化と手順書作成のポイントは以下の通りです。教える内容(業務)を洗い出し、項目ごとに整理する>>介護業務は「必須業務(身体介護)」「関連業務(掃除・洗濯・記録など)」「周辺業務」に区分されます。この3つに沿って業務を書き分けていきましょう。作業を細分化(準備・実施・後処理)し、時系列で整理する注意点・リスクを明記し、説明内容を統一する>>特に「自立支援」の視点から、利用者が自分でできることまでやってしまう過剰な介護を避けるよう指導します。教材(資料・動画)を共通化する具体的には、以下のような形で整理すると効果的です。業務名・項目手順・内容到達・評価基準(注意点)入浴介助①準備 → ②声かけ → ③実施「お湯の温度は大丈夫ですか」と日本語で確認し、滑らないよう支えながら誘導できるか挨拶利用者への基本対応目線を合わせ、自然な笑顔で実施できる記録記録方法の理解決められた項目をシステムに正確に入力できる例えば入浴介助であれば「準備:物品確認・環境整備」「実施:声かけ・介助・安全確認」「後処理:清掃・記録」と構造化し、文章は簡潔に専門用語を最小限に抑えます。このようにテンプレート化しておくことで、指導の差異を減らし準備時間の削減にもつながります。また、作成した手順書には、「動画」や「図解・写真」を紐づけて管理・共有することが実務上非常に有効です。(例:マニュアルの横にQRコードを配置し、手元のタブレットですぐに実技動画を見られるようにする等)。★マニュアルや動画を「ゼロから作る」現場の負担を減らすには?手順書や動画マニュアルの整備が理想だと分かっていても、日々の業務に追われる現場スタッフがゼロからすべてを作成・準備するのは、膨大な時間と労力がかかります。自社ですべてを賄おうとするのではなく、「すでに標準化された教材」をうまく活用することが、現場の負担を抑えつつ質の高い教育体制を最速で構築するコツです。最近では、マニュアル作成の手間を大幅に省くため、あらかじめ外国人介護職向けに多言語化された動画教材(eラーニング)を導入し、それをそのまま現場の「標準マニュアル」として活用する施設が増えています。シエンシーでも、外国人スタッフの技能実習・特定技能人材向けに、スマホやタブレットでいつでも確認できる多言語対応のオンライン動画教材をご用意しています。教育の仕組み化をスムーズに進めたい方は、ぜひチェックしてみてください。>> シエンシー 外国人材向け研修機能の詳細はこちら教えて終わりはNG│評価チェックリストの作成ポイント業務手順書だけでは、「できているかどうか」の判断が曖昧になります。そのため、チェックリストと評価基準をセットで設計することが重要です。このチェックリストは、実習生が段階的に「技能実習評価試験(初級・専門級・上級)」に合格していくための指標ともなります。チェックリストの設計ポイントは以下の通りです。項目を細分化する(例:座位での上衣の着脱ができる、車いすの点検ができる等)「できる/できない」で判断できる形式にする評価基準を明確にする※「ボディメカニクスを活用して安全に行えているか」といった身体の仕組みへの配慮も評価に含めます(例:声かけ=動作の前に必ず「〇〇しますよ」と伝えられるか、安全確認=車椅子のブレーキ忘れなどチェック項目を指差し確認できるか)このように定義することで、指導者による評価のブレを防ぎ、教育内容の抜け漏れ防止につながります。また、定期的にチェックを行うことで、実習生自身の「できた」という達成感を醸成し、次なる目標へのモチベーションを高めることができます。★「チェックリストと評価基準」に基づく客観的な評価は、処遇改善加算の「キャリアパス要件Ⅲ」を満たす基盤となります。また、ICT機器を用いた動画マニュアルの現場共有は、職場環境等要件の達成項目としても評価されます。4.外国人人材の継続的な教育のポイント│定着率上昇で人手不足で悩まない受け入れ後の教育は、一度設計して終わりではなく、「継続的に回る仕組み」として運用することが重要です。初期研修やマニュアルが整っていても、運用が不安定であれば効果は十分に発揮されません。本章では、教育を組織的に回し続けるための運用設計について解説します。進捗管理・評価制度の設計と教育記録の管理3章で作成したチェックリストや評価基準は、現場で実際に運用し、記録に残すことで初めて機能します。進捗管理が曖昧なままだと、指導者によって「どこまで教えたか」が分からなくなり、教育の遅れや実習生のモチベーション低下につながります。そのため現場では、作成したチェックリストを用いて定期的な面談とフィードバックを実施することが基本となります。実際に成果を上げている施設では、具体的な習得項目を明示した「Can Do チェックシート」、利用者との交流を深め日本語能力も高める「コミュニケーションシート」、そして日々の業務を振り返る「1日の確認表(振り返りシート)」といった多角的なツールが活用されています。その際、単に実習生の評価をつけるだけでなく、「どの業務を・いつ・誰が教えたか」をセットで記録に残すことが重要です。また、シフト制等で指導者が変わってもスムーズに引き継げるよう、進捗状況をチーム全体で共有する仕組みづくりも欠かせません。こうした記録を特定の担当者間だけで留めず、フロア全体で回覧・共有することで、周囲のスタッフが実習生の習得レベルを把握できるようになり、現場の「関わり」や「一体感」が醸成されます。具体的には、以下の内容をフォーマット化して日々の記録として管理します。日付内容担当者評価(課題や次回の目標など)〇月〇日入浴介助指導指導員A声かけはできているが、温度確認に一部改善必要このように記録を蓄積・共有することで、成長の可視化や問題発生時の原因特定に役立つだけでなく、監理団体や外国人技能実習機構(OTIT)等による定期監査時の重要なエビデンスとなり、コンプライアンス違反のリスクを防ぐことができます。さらに、これらのツールを日本人新人スタッフにも同様に活用することで、組織全体の教育レベルを底上げし、均一なサービス提供を可能にする効果も報告されています。★技能実習制度においては法定帳簿である「技能実習日誌」の作成・保存が義務付けられています。任意の教育記録と二重管理にならないよう、法定要件を満たしたフォーマットをベースに指導記録を統合管理する仕組みが必要です。また、この評価制度は施設全体の等級制度・賃金規程(処遇改善加算のキャリアパス要件)と連動した仕組みとして設計することが重要です。PDCAサイクルによる継続的改善教育運用を安定させるためには、PDCAサイクルを回し続けることが重要です。一度作ったマニュアルや評価基準も、現場の実態に合わせて改善しなければすぐに形骸化してしまいます。指導を通じて浮き彫りになったケアの課題を放置せず、日本人職員が「学び直し」の機会として捉えることで、現場の介護力向上に繋げる姿勢が求められます。ここでは「食事介助の習得」を例に、具体的なPDCAの回し方を見てみましょう。Plan(計画)入職1ヶ月で安全な食事介助ができる状態を目標に設定し、既存の業務手順書とチェックリストを準備する。>>この際、1年目(介護技術)、2年目(生活リハビリ)、3年目(自立支援介護)といった習得ステップと、それぞれの段階で求められる思考プロセスを明確に提示しておくことが、実習生の目的意識を高めます。Do(実行)手順書に沿ってOJTを実施し、実習生に実際の食事介助を行ってもらう。Check(評価)進捗確認の面談や日々の記録から、「とろみのつけ方」に戸惑っていることや、「ゆっくり食べさせて」という抽象的な指示が正確に伝わっていない(ペースが速すぎる)ことが判明する。Act(改善)「ゆっくり」という指示を「1口ごとに5秒待つ」と手順書に具体化し、とろみのつけ方はスマートフォンで見られる短い動画をマニュアルに追加する。その上で、翌月の教育計画を修正する。>>こうした改善を通じて、将来的な「介護福祉士」の国家資格取得を視野に入れたキャリアパスを法人として支援し続けることが、長期的な定着と戦力化への鍵となります。このように、現場で起きた実習生のつまずき(Check)を「本人の理解力不足」として片付けるのではなく、「教え方やツールに改善の余地はないか?」と捉えて仕組みをアップデート(Act)していくことが重要です。このサイクルを定期的に回すことで、より実践的で誰にでも伝わる教育体制へと進化させることができます。★教育運用のPDCAを回し組織内の情報を適切に管理する体制は、介護・障害福祉サービス事業者に義務化されている「財務状況等(経営情報)の報告・公表」など、透明性が厳しく問われる現在の経営環境において、施設を守るガバナンス構築に直結します。5.外国人介護人材で中長期的に経営基盤を固めよう外国人介護人材の受け入れは、短期的な人員補充ではなく中長期的な人材戦略です。成功の鍵は「属人化」を防ぎ、準備・研修・業務標準化を組織の仕組みとして定着させることにあります。誰でも同じ水準で指導できる体制が、教育の質と定着率を大きく高めます。まずは「入浴介助の手順」など、日常業務の小さな範囲からマニュアル化に着手しましょう。今年度(令和8年度)の報酬改定に伴う処遇改善加算の要件クリアや、目前に迫る新制度「育成就労制度」・特定技能への移行も見据え、今すぐ計画的な体制づくりを進めることが、安定した施設経営の第一歩となります。外国人スタッフの教育を「仕組み化」!多言語対応のアニメ研修『シエンシー』外国人スタッフの指導における「教え方のバラつき」や「日本人スタッフの負担(教え疲れ)」を根本から解決するなら、eラーニングシステムの活用が最も近道です。障害・介護福祉施設向けオンライン研修サービス『シエンシー(Ciensee)』では、外国人材向けに多言語字幕機能を搭載しました。現場の「伝わらない」を解消し、教育を完全に標準化(仕組み化)するツールとしてご活用ください。【シエンシーの外国人向け新機能の特長】1回10分のアニメーション動画言葉だけでは伝わりにくい介助の動きや微妙なニュアンスを、視覚的に分かりやすく直感的に学習できます。多言語対応(特定技能・育成就労にも最適)母国語を交えた学習環境により、「わかったふり」による誤解を防ぎ、重大な事故リスクを大幅に軽減します。ニュアンスの伝達が難しい「虐待防止研修」にも最適文化や価値観の違いから正しく指導するのが難しい「虐待防止」などの法定研修も、アニメーションの具体的なシチュエーションと多言語字幕を掛け合わせることで、本質的な理解を促しリスクを未然に防ぎます。教える側の負担を劇的に削減スマホやPCを使っていつでも自己学習できるため、現場の日本人スタッフが本来のケア業務に集中できる環境を作ります。※なお、2026/04/13現時点では留学生向け動画を調整中です。近日大幅にアップロードを行います。今しばらくお待ちください※「導入の仕方がわからない」「自施設に合った使い方が知りたい」といった疑問にも、個別で丁寧にご相談にのりますので、ITツールに不慣れな事業所様もご安心ください。ご興味がございましたら、ぜひお問い合わせフォーム(24時間受付)よりお気軽にご連絡ください。 お急ぎの方や、まずは直接話を聞いてみたいという方は、お電話でのご相談も承っております。📞 お電話でのご相談:03-5442-9787 (受付時間:平日 9:00〜18:00)※主な参考文献※出入国在留管理庁,厚生労働省,育成就労制度の概要(令和7年12月改訂),2025小平 達夫,外国人介護士に対するキャリア開発支援 —先駆的実践施設での取組事例調査より一早川 智津子,育成就労制度導入の意義と課題,2025広島県,外国人介護人材受入れのためのガイドブック (Guidebook for accepting foreign care workers)公益社団法人 日本介護福祉士会,令和5年度 介護の日本語学習支援等事業 介護職種の技能実習指導員講習テキスト,2023